不動産の取得に伴う諸費用の取り扱い

事務所だより

 不動産を取得する際には、仲介業者に支払う手数料を始め、登記費用など様々な支出が伴います。

 取得した固定資産の取得価額には、原則としてその資産の購入(建築)代価、その付随費用及び取得のために直接要した費用の額が含まれるとされていますが、選択により、費用計上が認められている支出もあります。

 今回は不動産取得に伴う支出の金額が費用として計上できるものか、または不動産の取得価額に算入すべきものであるかを、個別に確認していきたいと思います。

 仲介手数料

 仲介業者に支払う仲介手数料は、まさに取得のために直接要した支出であるため、取得価額に算入することになります。ただし、土地と建物を一括して購入した場合には、この仲介手数料もそれぞれの購入代価などを基準にして、土地に係る部分と建物に係る部分を合理的に按分する必要があります。

 その上で建物に係る仲介手数料相当額は、減価償却によって各事業年度に費用化されることになります。

 登録免許税(登記費用)、不動産取得税

 いずれも不動産の取得に関して支出するものではありますが、これらは事後的な費用であるうえ、流通税的なもの、第三者対抗要件を備えるためのものであることから、取得価額に算入しないことが認められています。また、売買契約書に貼付する印紙(税)も同様です。

 ただし、個人が自宅を取得した場合など、事業の用に供するものでない場合は、売却時に取得費として控除できます。

 未経過固定資産税清算金

不動産売買に伴い、売買代金のほかに、譲渡の日からその年の年末までの固定資産税(未経過固定資産税)を清算することが一般的に行われています。これは、購入者にも固定資産税の負担を求めるためのものですが、そもそも固定資産税は、毎年1月1日における所有者が納税義務者となります。

 したがって、購入者が地方公共団体に対して納付するものではありませんので、その不動産の購入代価の一部として取り扱われるため、取得価額に算入することになります。

 土地とともに取得した建物の取り壊し費用等

 土地と建物を一括して購入した場合には、それぞれの取得価額を資産計上することになります。しかし、もともとその建物を利用するつもりがなく、例えば、その土地の上に新たに新社屋を建築することが明らかである場合などは、最初から必要であったのは土地のみであることになります。

 この場合、その建物部分の取得価額と取り壊し費用は、土地の取得価額に算入しなければなりません。また、すぐに建物を取り壊した場合以外であっても、購入後概ね1年以内に取り壊しに着手するなど、やはり当初からその土地を利用する目的であることが明らかな場合も、土地の取得価額に算入することとされています。ただし、購入した事業年度において、取り壊す前までその建物を事業の用に供していた場合は、その年度の減価償却費の計上は認められています。

 借地権の取得価額

 借地権の取得価額には、原則として、当初の借地契約にあたり地主に支払った対価の額(一般的に権利金として支払い、返還されないものなど)が該当します。また、土地の上にある建物(借地権付建物)を取得した場合に、その建物などの購入価額のうちに借地権の対価が含まれているときは、その金額も借地権の取得価額となります。

 更に、杓子契約に伴い不動産業者に支払った手数料も取得価額に算入されます。

 なお、借地契約の更新に伴い支払う更新料についても取得価額に算入することになりますが、この場合、更新直前の借地権の帳簿価額のうち、一定の金額を費用計上することが認められています。

【費用計上が認められる金額】

更新直前の借地権の帳簿価額 × 更新料の額 / 更新時の借地権の価額

 借入金の利息

 不動産を取得するために借り入れた借入金の利息については、たとえその不動産の使用開始前の期間に係るものであっても、取得価額に算入しないことが認められています。

 ただし、個人で今まで事業を営んでいなかった方が、新規に事業を開始するににあたって借入を行った場合には、家事費として必要経費に算入できませんのでご注意ください(この場合でも取得価額に算入することは認められていますので、建物部分については事業開始後に減価償却費として費用化することが可能です)。

 立退料の支払い

 土地、建物を購入し、その際事故で使用するために、もともとその土地、建物を使用していた賃借人に対して支払った立退料は、土地、建物の取得価額に算入することになります。また、従前から土地を賃貸していた場合で、建物の所有者である借地人に立ち退いてもらうために支払う立退料は、通常、借地権の買戻しの対価となりますので、土地の取得価額に加算されます。

 一方で、例えば従前から所有している賃貸建物の賃借人に立ち退いてもらい、引き続き自己で使用する場合や、またはその建物を取り壊して新たな建物を建築する場合は、費用として計上することになります。

 地鎮祭・上棟式・落成式(竣工式)の費用

 建物建築の催事に係る支出は、建物の取得のために直接要した費用の額と考えられており、取得価額に算入することになります。ただし、そのうち落成式(竣工式)については、その建物の完成後に行われる式典であることから、事後的な費用として費用計上することが認められています。

 法人が役員より不当に高い価額で購入した不動産

 法人が役員より購入した不動産の価額が、不当に高い場合は、その不動産の時価が取得価額となり、差額については、その役員に対する給与として取り扱われるため、損金算入が認められないケースが生じます。

 また、逆に著しく低い価額で購入した場合であっても時価が取得価額となるため、差額については「受贈益」として収入計上しなければなりません。更に、その価額が時価の2分の1未満である場合には、その役員は時価で売却したものとみなされ、譲渡税が課されますのでご注意ください。

 その他取得価額に算入しないことが認められているもの

①建物の建築のために行った調査や測量、設計費用等で、その建築計画を変更したことにより不要となった費用や、②一度締結した売買契約書を解除して、他の不動産を取得する場合の違約金の額については、新たに取得する不動産の取得価額に算入することを強制するのは実情に合わないという考え方に基づいて、費用計上が認められています。

【参考資料】国税庁「基本通達・法人税法