事業専従者控除・青色事業専従者控除について

事務所だより

11月事務所だより

 所得税では、原則として、事業主が生計を一にする親族に給料を支払っても、その金額を必要経費に算入することは出来ません。

 ただし、白色申告者の場合は、事業に専ら従事する親族従業員の数、配偶者かその他の親族化の別、所得金額に応じて計算される金額を必要経費とみなす「事業専従者給与控除の特例」、青色申告者の場合は、一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする「青色事業専従者給与の特例」があります。

 今回は、事業専従者控除・青色事業専従者給与について見ていきます

事業専従者控除

事業専従者の要件

 事業専従者とは、次の要件のすべてに該当する者をいいます。

① 事業主(白色申告者)と生計を一にする配偶者その他の親族であること
② その年の12月31日現在で、年齢が15歳以上であること
③ その年を通じて6か月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること

事業専従者控除額

 事業専従者控除額は、次の①または②の金額のいずれか低い金額となります。

① 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円

② この控除をする前の事業所得等の金額を、専従者の数に1を足した数で割った金額

  なお、この特例の適用を受けるためには、確定申告書にこの控除を受ける旨や、その金額など必要な事項を記載する必要があります。

青色事業専従者給与

青色事業専従者給与の要件

 青色事業専従者とは、次の要件のいずれにも該当する者をいいます。

① 事業主(青色申告者)と生計を一にする配偶者とその親族であること
② その年の12月31日現在で、年齢が15歳以上であること
③ その年を通じて6か月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

 ただし、年の途中の開業等の理由により、事業がその年中を通して営まれなかった場合や、事業に従事する親族の病気、婚姻その他の理由により、その年を通して事業に従事することができなかった場合には、事業に従事することができると認められる期間の2分の1を超える期間において、専ら従事しているものとされています。

届出書の提出

 この特例の適用を受けるためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

 提出期限は、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までとされています。

 なお、この届出書には、青色事業専従者の氏名、仕事の内容、給与の金額、支給期などを記載することとされています。(下記表参照)

 また、専従者が増える場合や、給与を増額する場合など、届出の内容を変更するためには、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく納税地の所轄税務署長に提出しなくてはなりません。

       届出書の記載事項
① 提出者(事業主)の氏名、住所(納税地)、職業
② 青色事業専従者の氏名・続柄・年齢・経験年数
③ 仕事の内容・従事の程度、資格等
④ 給与及び賞与の金額(賞与は支給基準)・支給期
⑤ 昇給の基準
⑥ 他の業務等にも従事している場合にはその事実
⑦ 使用人の給与に関する事項(②~⑤に準ずる)
⑧ その他参考になるべき事項

青色事業専従者給与の額

青色事業専従者給与として認められる額は、次の金額となります。

① 届出書に記載されている方法により支払われ、かつその記載されている金額の範囲内で支払われているものであること。

② 労務の対価として相当であると認められる金額であること

  したがって、①や②を超える部分の金額は過大とされ、必要経費に算入することは出来ません。

  この場合の「労務の対価として相当であると認められる金額」については、非常に判断が難しいところです。労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、他の使用人の給与の状況、同種の事業でその規模が類似する者の給与の状況などが判断の基準とされています。

 また、税務署との見解の相違による、国税不服審判所における判決例が多くあります。

 その裁決例、判例を見ると、

売上金額が当事者の2分の1から2倍までの類似同業者の青色事業専従者給与の平均額
他に使用人がいる場合には、その使用人の労務の性質、従事時間等を基準に算定した金額

などを基準としているケースが見受けられます。

 ただし、類似同業者の平均額を調べることはかなり困難であることから、他の使用人の給与の額(使用人がいない場合には親族というフィルターをはずして常識的に算定した金額)などを基準として、検討することになると思われます。

親族が事業に専ら従事しているかどうかの判定

 事業に従事する親族であっても、次に該当する期間がある者は、その期間は、「事業に専ら従事する」期間に該当しないこととされています。

 ① 高校、大学その他専修学校などの学生又は生徒である者。ただし、夜間において授業を受ける者が昼間を主とする事業に従事する場合、昼間において授業を受ける者が夜間を主とする事業に従事する場合などのように、事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者は除かれます。

 ② 他に職業を有する者。ただし、その職業に従事する時間が短いなど、事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者は除かれます。

 ③ 老衰その他心身の障害により、事業に従事する能力が著しく阻害されている者

その他の注意点

 「生計を一にする」とは、必ずしも同居していることをいうのではなく、勤務の都合により家族と別居している場合や、修学・療養などのために別居している場合でも、生活費・学費・療養費などを常に送金しているときや、休日等には起居を共にしているときも含まれます。

 また、白色申告者の事業専従者、青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受ける者は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

【参考資料】国税庁タックスアンサー