投資とは、利益を見込んで投資信託や株式などの資産を購入することです。「貯蓄から投資へ」の流れを加速するため、一般の人々の証券市場への参加を促す税制改正を行うなど、さまざまな環境整備が行われてきました。令和6年改正では、少額投資非課税税制(NISA)の年間投資枠や非課税保有期間が大幅に拡大され、家計の資産形成を支援する流れがより加速したことは記憶に新しいところです。そして、投資には様々な種類があり、その内容に応じて課税上の取り扱いが異なります。
今回は、近年、特に人気が高まっている暗号資産やFX取引などについて、課税上の留意事項をみていきます。
暗号資産の証拠金取引
暗号資産は仮想通貨とも呼ばれ、インターネット上でやり取りできる財産的価値で、ビットコインやイーサリアムなどが代表的な暗号資産とされています。暗号資産は金融庁・財務局の登録を受けた事業者(取引所)から入手・換金することが出来ます。
個人が暗号資産取引を行った場合、そこから生じた所得は雑所得(その他雑所得)に区分されますが、その年の取引に係る収入金額が300万円を超える場合は、取引に係る帳簿書類の保存の有無に応じて、保存がある場合には事業所得、保存がない場合には雑所得(業務に係る雑所得)に区分されます。
暗号資産取引(売却)により生じた所得金額は、【計算式1】により算出します。
【計算式1】暗号資産取引に係る所得金額の計算(例:ビットコインBTC)
譲渡価格-(購入価額÷購入数量)×売却した数量=所得金額
※1 総平均法又は移動平均法のうち、いずれか選択した方法により算出した金額となる。
※2 その他の必要経費がある場合、その必要経費の額を差し引いた金額となる。
オン豪資産の売却に係るsっ歩説く金額の計算上、必要経費となるのは、売却の際に支払った手数料の他、インターネットやスマートフォン等の回線使用料などのうち、売却のために直接必要な支出と認められる部分の金額です。
なお、年間の暗号資産取引により損失が生じたとしても、給与所得や不動産所得など、その他の総合課税の所得や、株式譲渡所得などの申告分離課税に該当する雑所得と損益通算することはできません。
外国為替証拠金取引(FX)
外国為替証拠金取引とは、外国為替の売買を、一定の証拠金(保証金)を担保として、その証拠金の何十倍もの取引単位で行う取引を言います。
FX取引には、店頭デリバティブ取引がありますが、差金決済により生じた所得金額は、【計算式2】により算出します。
【計算式2】FX取引に係る所得金額の計算
(FX取引時に生じる為替レート変動時に伴う損益)+(累計スワップ)-(取引に係る必要経費)=所得金額
※1 売却時の為替レートと購入時の為替レートの差額(獲得値幅)をいう。
※2 2国間の金利差によって発生する金利差調整分(スワップポイント)の累計額を言う。
差金決済により差益が生じた場合は他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として所得税等15.315%の申告分離課税されます。なお、他の先物雑所得等と損益通算しても引ききれない損失の金額は、一定要件のもと、翌年以後3年内の隔年分の先物雑所得等の金額から控除できます。
金地金の譲渡取引
金地金を譲渡した際の所得は、原則、譲渡所得として、給与所得などほかの所得と合わせて総合課税の対象となります。ただし、金地金の譲渡が営利目的として継続的に行われている場合は、その実態に応じて事業所得又は雑所得となります。
金地金を売却した場合の所得金額は【計算式3】により算出します。
【計算式3】金地金取引に係る所得金額の計算
1 所有期間が5年以内のもの(総合課税短期)
(1)譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=金地金の譲渡益①
(2)(①+その年の金地金以外の総合課税の譲渡益)-譲渡所得の特別控除額50万円=課税所得
2 所有期間が5年を超えるもの(総合課税長期)
(1)譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=金地金の譲渡益①
(2)(①+その年の金地金以外の総合課税の譲渡益)-譲渡所得の特別控除額50万円=譲渡所得の金額②
(3)②×1/2=課税所得
※1 特別控除の額は、金地金の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額に対して50万円です。
※2 短期・長期の両方の譲渡益がある場合、特別控除額は合わせて50万円が限度となる(短期の方から先に控除)