個人事業主の必要経費の注意点

事務所だより

10月事務所だより

 近年、働き方も変化し、企業等と仕事ごとに契約を結ぶフリーランスも増えています。

その結果、法人を設立しないで個人で事業を営む方も増加傾向にあるようです。

個人事業主の場合、

事業としての行動と、日常生活としての行動とがあり、どちらにも関連する費用を支出した場合に、

どこまでが必要経費となるのか判断が難しいケースがあります。

 そこで、個人事業主の主な必要経費について、確認します。

必要経費とは

 個人事業主の必要経費とは、事業所得や不動産所得などの計算上、総収入金額に対応する売上原価、その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額、また、その年に生じた販売費・一般管理費、その他の業務上の費用の額とされています。

 以下、主な項目について見ていきます。

租税公課

 租税公課とは、税金や会費などの各種賦課金のことをいいます。原則として、その年中に納付額が確定したものが必要経費となります。ただし、下表のように、前記のもの全てが必要経費になるわけではありませんのでご注意ください。

必要経費となるものの例  必要経費とならないものの例
固定資産税、自動車税、登録免許税、
印紙税、
事業税、消費税(税込処理の場合)、組合費
所得税、住民税、相続税、国税の加算税
・延滞税
地方税の加算金・延滞金

減価償却費

 事業のために用いられる建物、建物付属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。土地などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。減価償却資産の取得に要した金額は、取得したときに全額必要経費になるわけではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が定められています。減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法により各年分の必要経費(減価償却費)として配分していく手続きをいいます。

 使用可能期間が一年未満のもの、又は取得価額が10万円未満のものは、全額を事業の用に供した年分の必要経費とします。

 また、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下、3分の1に相当する金額を、事業の用に供した年以後3年間で必要経費に算入することができます。

 さらに、青色申告者が取得した取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産については、一定の要件のもと、300万円に達するまでの取得価額の合計額を、その事業の用に供した年分の必要経費に算入できるという特例もあります。

修繕費と資本的支出

 固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、修繕費として支出したときに必要経費となります。

 ただし、その修理、改良等が固定資産の使用可能期間を延長させ、または価値を増加させるものである場合は「資本的支出」となり、前述の減価償却資産として減価償却の対象となるのでご注意ください。なお、資本的支出の要件に該当しても、20万円未満である場合は修繕費とすることができます。

損害保険料

 事業用の固定資産または棚卸資産について支払う損害保険料は必要経費に算入することができます。

 ただし、長期総合保険や建物共済など、積立部分がある保険料については、その積立部分は必要経費から除かれます(資産として計上することになります)。

 また、例えば5年分の保険料を一括で支払ったような場合には、その年分に対応する金額のみが必要経費となり、残額は前払費用として、翌年以降の必要経費に計上することとなります。

親族に支払う給料、家賃等

  所得税では、原則として、事業主が「生計を一にする」親族に、給料(青色事業専従者給与を除きます)・家賃・借入金利子などを支払っても、その金額を必要経費に算入することはできません。

 この場合の「生計を一にする」とは、必ずしも同居していることをいうのではなく、勤務の都合により家族と別居している場合や、就学、療養などのために別居している場合でも、生活費・学費・療養費などを常に送金しているときや、休日等には起居を共にしているときも含まれます。

家事費

 家事費とは、言葉の通り家事上の経費を言います。具体的には、生活費、医療費、娯楽遊興費のほか、自宅に係る固定資産税、家賃、火災保険料、水道光熱費などがあげられます。これらの費用は事業に係る総収入金額を得るための費用や業務上の費用に該当しないため、当然必要経費に算入することはできません。

家事関連費

 家事関連費とは、前述の家事費に関連する経費をいいます。

 具体的には、自宅兼店舗に係る固定資産税、減価償却費、家賃、火災保険料、事業と家事共用の水道光熱費、電話代、インターネット回線費用、消耗品費、車両に係る費用などです。

 これらの費用については、事業や経費の内容、家族及び従業員の構成、自宅兼店舗その他の資産の利用状況などを検討して、業務上、直接必要である部分を明らかに区分することができる場合は、その部分の金額のみ必要経費に算入することができます。

必要経費に算入することができる家事関連費の区分

 必要経費に算入できる家事関連費の区分については前述のとおりですが、実務上は明確な基準が設けられていません。従って、具体的には次のような判断を行い、必要経費部分を算定することが考えられます。

自宅兼店舗に係る費用

 事業用部分と自宅部分の床面積により区分

水道光熱費

 事業用部分の使用面積割合、コンセントの数、メーターなどにより区分

電話代、インターネット回線費用、パソコン購入に係る費用

 事業用部分の利用明細、事業に係る使用時間などにより区分

車両に係る費用

 事業に係る走行距離、使用日数などにより区分

 【参考資料】国税庁タックスアンサー「個人事業