個人所得課税に関する注目の税制改正

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個人所得課税に関する令和8年度税制改正では、物価高への対応のほか、強い経済の実現に向けて、租税特別措置の適正化や、政策効果の強化のための様々な改正が行われました。本号ではこれらのうち、「NISAの投資可能年齢の拡充」「住宅ローン控除の拡充と延長」のポイントをみていきます。

1. NISAの投資可能年齢の拡充

改正前

NISA(少額投資非課税制度)は、平成25年1月に開始された制度で、株式や証券投資信託取引で得た一定の利益を非課税とする制度です。NISAは数度の改正を経て、既に老後等に備えた十分な資産形成手段となっています。しかし、対象年齢が18歳以上に限定されていることから、次世代の資産形成をいっそう促進し、長期・安定的な投資を通じて大学進学など、成人後のライフイベントに伴う必要な資金を備えられるよう設けられたものです【表1】。

  • 改正前・近年の状況: 令和6年1月からは、つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円を投資可能とするなど、制度の抜本的な拡充・恒久化が図られました。非課税保有限度額は1800万円(うち成長投資枠1200万円)、非課税保有期間は無期限とされています。なお、対象年齢はつみたて投資枠・成長投資枠のいずれも18歳以上に限定されていました。

改正後

令和8年度税制改正により、いわゆる「こどもNISA」(つみたて投資枠の投資可能年齢の拡充)が令和9年1月からスタートします。

  • 改正の内容: つみたて投資枠に限り、0歳から11歳でも利用できる「こどもNISA」が新設されました。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円までとなります。
  • 払出し要件: 原則として、対象の子が18歳になるまでは払出しができませんが、学校の入学金又は教育費、生活費の支払のためである場合などは、子が12歳以降で、かつ払出しすることに同意した場合に限り、親権者等による払出しが可能になります※。
  • 子の年齢が18歳に達した場合: 年間投資枠等は、自動的に18歳以上の制度に移行します。

※注記: 資金の使途が子のためのものであり、子が払出しに同意したことを示す書面とともに、親権者等(口座管理者)が申出書を金融機関に提出する。

【表1】 NISAの投資可能年齢の拡充(令和9年〜)

  • こどもNISA: 対象年齢 0〜17歳(※つみたて投資枠) / 年間投資枠 60万円 / 非課税保有限度額 600万円 / 投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 / 運用管理 一定の要件の下、12歳以降は払出し可
  • つみたて投資枠: 対象年齢 18歳以上 / 年間投資枠 120万円 / 非課税保有限度額 自動的に移行 / 投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 / 運用管理 制限なし
  • 成長投資枠: 対象年齢 18歳以上 / 年間投資枠 240万円 / 非課税保有限度額 1,800万円(1,200万円 内数) / 投資対象商品 上場株式・投資信託等 / 運用管理 制限なし

2. 住宅ローン控除の拡充・延長

改正前

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅の新築・取得又は増改築等をして令和7年12月31日までに入居した場合、最大13年間、各年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税等から控除する制度です。15歳未満の子を有する世帯又は夫婦のいずれかが40歳未満の世帯(子育て世帯等)が新築住宅を購入した場合、住宅の種類に応じて、購入に係る借入金の限度額が500万円又は1000万円上乗せされています。

改正後

控除の適用期限を5年間延長して令和12年12月31日までとしたほか、次の項目について改正が行われました【表2】。

  1. 子育て世帯等への上乗せ措置: 子育て世帯等への借入金限度額の上乗せ措置が、省エネ基準適合以上の既存住宅も適用可能となりました。
  2. 質の高い既存住宅: 省エネ基準適合以上の既存住宅の控除期間が13年間に拡充されました。また、既存住宅のうち、省エネ性能が高い認定住宅(長期優良・低炭素住宅)・ZEH水準省エネ住宅に係る借入限度額が3500万円(改正前3000万円)に引き上げられました。
  3. 省エネ基準適合住宅: ZEH水準の基準引上げにより令和12年度以降、省エネ基準適合住宅は新築できなくなることから、同住宅(新築)に係る借入限度額を2000万円に見直した上、令和10年度以降は適用対象外となりました(令和9年末までに建築確認を受けたものを除く)。
  4. 床面積要件: 合計所得金額が1000万円以下の場合に40㎡以上とされている特例の適用範囲が既存住宅にも拡充されました。ただし、合計所得金額1000万円超の方と子育て世帯等の上乗せ措置利用者は50㎡以上となるため、子育て世帯等は床面積の特例と上乗せ措置との選択適用となります。

【表2】 住宅ローン控除の拡充・延長(控除率:0.7%)

  • 長期優良住宅・低炭素住宅:
    • 新築: 4,500万円(5,000万円)× 13年
    • 既存: 3,500万円(4,500万円)× 13年
  • ZEH水準省エネ住宅:
    • 新築: 3,500万円(4,500万円)× 13年
    • 既存: 3,500万円(4,500万円)× 13年
  • 省エネ基準適合住宅:
    • 新築: 2,000万円(3,000万円)× 13年(※R9年末までに建築確認を受けたもの等は2,000万円×10年)
    • 既存: 2,000万円 × 10年
  • その他住宅:
    • 新築: – (支援対象外)
    • 既存: – (支援対象外)
  • 所得要件: 合計所得金額 1,000万円以下(一部要件あり)
  • 床面積要件: 40㎡以上(ただし、所得1,000万円超の者及び子育て世帯等への上乗せ措置利用者は50㎡以上)
  • 立地要件: (R10年以降入居分から)土砂災害等の災害レッドゾーンの新築住宅は適用対象外(建替え、既存住宅・リフォームは適用対象)

(注)

  1. 借入限度額のカッコ内は、子育て世帯等に適用される借入限度額
  2. ZEH水準省エネ住宅:日本住宅性能表示基準の断熱等性能等級(断熱等級)5以上かつ一次エネルギー消費量等級(エネルギー等級)6以上の住宅
  3. 省エネ基準適合住宅:断熱等級4以上かつエネルギー等級4以上の住宅

3. まとめ

このほか、暗号資産の分離課税化、セルフメディケーション税制の拡充、防衛特別所得税の創設など、くらしに関係する税制について様々な改正が行われています。年末調整や確定申告の際は、改正の有無に十分注意してください。

(参考資料:財務省パンフレット「令和8年度税制改正」、金融庁資料より)