税務調査の重要調査項目「期ずれ」とは?

事務所だより

 皆さんは、「期ずれ」という言葉をご存じでしょうか?

 期ずれとは、本来、当事業年度又は当年分で処理すべき売上金額や売上原価の額あるいは損金・必要経費の額を、その前年や翌年に計上してしまうことです。税務調査があった場合、調査対象が法人・個人事業者を問わず、期ずれは必ず調査対象となる重要項目です。

 今回は、期ずれが発生する原因と、それを防止するための売上金額等の管理方法をみていきます。

期ずれが発生する原因

 例えば、毎月20日を占め日として商品を販売する法人は、売上代金の請求書を20日付で発行します。

そして21日以降の商品販売代金は、翌月20日に発行する請求書で請求します。

 期中の取引であれば20日締めの請求書で売掛金の額を計上して問題ありません。しかし、月末に決算日が到来した場合、21日以降月末までの間に商品を販売したのにもかかわらず、これを期中と同様、20日締めの請求書で売掛金の計上を行うと、本来、当事業年度の売上として計上すべきものが翌事業年度の売り上げとして計上され、当事業年度の売上金額が計上漏れとなってしまいます。

 あるいは、製造業を営む法人が製品を製作するための材料費や、外注先に発注した外注費について、当事業年度中に製品が完成しなかった場合、仕掛品として処理すべきところ、これを行わないですべての費用を当事業年度に計上してしまうと、当事業年度の売上原価の額が過大計上となってしまいます。

 これらの誤った処理を税務調査で指摘され、修正申告を行うこととなった場合、追徴納付税の他、過少申告加算税や延滞税など、余分な税負担が生じます。

発生主義と費用収益対応の原則

 売上・仕入とも期ずれの発生を未然に防ぐためには、「発生主義」と「費用収益対応の原則」を正しく理解する必要があります。

発生主義

 発生主義とは、仕入や売上代金の授受の有無にかかわらず、取引が確定した時点で費用と収益を認識する考え方です。

 公正妥当な会計慣行を定めた企業会計原則では、すべての費用及び収益は、「その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければならない」と定められています。

費用収益対応の原則

 費用及び収益は、その発生の源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目を対応させて損益計算書に表示しなければならないとする原則です。

 なお、費用収益対応の原則は、2つの形態があります。売上原価については、商品・製品を媒介として収益と費用を個別対応させることが可能です。販売費・一般管理費は、売上高と個別に対応させることが困難なため、ある期間に発生した販売費・一般管理費は同じ期間に発生した収益に貢献したであろうとみなし、その気に発生したものは全てその期の費用とするものです。

正しい所得計算は正しい納税につながる

 売上金額は事業活動の成果として獲得したものです。そしてその売上金額を獲得するために要した費用である売上原価や販売費・一般管理費などは、売上金額に対応させて計上しなくてはなりません。そのように計算することで、事業年度又は年分の所得金額を正確に計算することが出来るのです。このことは、事業の形態が販売業やサービス業、または製造業などであっても変わることはありません。

 法人・個人事業主を問わず、期間損益が適正に計算されなければ正しい所得金額を算出することはできません。正しい所得金額が算出されなければ、結果として正しい納税額が算出されません。これが税務調査において期ずれが厳しくチェックされる理由なのです。

期ずれを防ぐために

 期ずれを防ぐためには、具体的に次のような事項に注意する必要があります。

請求締め日以降、決算日までの売り上げが正しく当期の売り上げに計上されているか

翌期の売り上げであるにもかかわらず、当期に繰り上げて計上されていないか

決算日前後の出荷伝票や納品書控、領収書控などから、取引年月日や金額を確認し、当期の売上金額に計上すべきものが計上漏れとなっていないか

仮受金や前受金、預り金などの負債科目の中に、当期の売上金額に計上すべきものが含まれていないか

期中は現金主義で処理している場合に、期末売掛金で計上すべきものが含まれていないか

 通常取引の中でも、決算日前後の取引は期ずれが怒りやすく注意を要します。

 取引先と連絡を密にして取引内容を双方で確認し、場合によっては取引先に残高確認書の発行を依頼するなどして、誤りなく当期に計上すべき取引金額を確定することが大事です。