個人所得課税・子育て世帯に対する支援を中心に
令和6年度税制改正では、賃金上昇が物価高に追い付いていない意国民の負担を緩和し、物価上昇を上回る持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税・個人住民税の定額減税の実施や賃上げ促進税制の 強化等が行われました。この他、資本蓄積の推進や生産性の向上、地域経済や中堅・中小企業の活性化等の観点からも種々の改正が行われました。
今回は所得税・個人住民税の定額減税とともに特に家計への影響が大きい子育て世帯等に対する「住宅うローン控除の拡充」「住宅リフォーム税制の拡充」にポイントを絞ってみていきます。
「子育て世帯等」とは?
子育て中の世帯は、安全・快適な住宅の確保や、子供を扶養する方に万が一のことがあった際のリスクへの備えなど、様々なニーズを抱えており、子育て支援を進めるためには、税制においてこうしたニーズを踏まえた措置を講じてい行く必要があります。そこで、子育て世帯や若者夫婦世帯に対する住宅税制が見直されました。
見直しの対象となる「子育て世帯等」は、今回の税制改正で、新たに定義づけされた概念で、次の①又は②に該当する世帯をいいます。
① 18歳以下の扶養親族を有する
② 自身又は配偶者のいずれかが39歳以下
子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用し住宅の新築などをした場合に、最大13年間、各年末の住宅ローン控除の残高の0.7%を所得税額から控除できます。なお、借入金には一定の限度額があります。
改正の内容
子育て世帯等の住宅購入支援として次の改正が行われました。
① 新築・買取再販住宅の購入に係る借入金の限度額を住宅の種類ごとに500万円あるいは1000万円上乗せする。
② 新築住宅の床面積要件について、合計所得金額1000万円以下の者に限り40㎡に緩和する。
対象となる住宅
改正内容を具体的に示したのが【表1】です。対象となる住宅の主な定義は、次のとおりです。
新築・買取再販住宅 | 認定住宅 | ゼッチ水準省エネ住宅 | 省エネ基準適合住宅 |
借入限度額 | 4,500万円 | 3,500万円 | 3,000万円 |
子育て世帯 | 5,000万円 | 4,500万円 | 4,000万円 |
それ以外 | 4,500万円 | 3,500万円 | 3,000万円 |
【買取再販住宅】
・購入時点でその住宅の新築の日から10年を経過しているもの
・原則、昭和57年1月1日以後に建築されたもの
・既存住宅について、宅地建物取引業者により一定の特定増改築工事等が行われていること
【ゼッチ水準省エネ住宅】
認定住宅(認定長期優良住宅・低炭素住宅と認定されたもの。以下同じ。)以外の家屋で、エネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅として建築士等が証明したもの。
【省エネ基準適合住宅】
認定住宅・ゼッチ水準省エネ住宅以外の家屋で、エネルギーの使用の合理化に資する住宅として建築士等が証明したもの。
控除しきれない税額の扱い
住宅ローン控除を適用して所得税額から控除しきれない税額があった場合は、従来と同様、控除限度額の範囲内で個人住民税から控除される取り扱いが継続されます。
適用期限
①の見直しは、令和6年中に入居した場合に、②の見直しは、令和6年12月31日以前に建築確認を受けたじゅうたくについて、それぞれ適用できます。
子育て世帯等にに対する住宅リフォーム税制の拡充
マイホームに耐震改修やバリアフリー回収などのリフォームを行った場合、その工事の標準的な費用の10%を、其年分の所得税額から控除できる「住宅リフォーム税制」があります。
改正の内容
子育てに対応した次6つの改修工事について、対象工事限度額を250万円、最大控除税額を25万円とする特別枠が設けられました。
・住宅内における子供の事故を防止するための工事
・対面式いキッチンへの交換工事
・開口部の防犯性を高める工事
・収納設備を増設する工事
・開口部・界壁・床の防音性を高める工事
・間取り変更工事(一定のものに限る)
この改正を含む、住宅リフォームに係る所得税の特例措置の概要は【表2】のとおりです。
対象工事 | 対象工事限度額 | 最大控除額(対象工事) |
耐震 | 250万円 | 25万円 |
バリアフリー | 200万円 | 20万円 |
省エネ | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) |
三世代同居 | 250万円 | 25万円 |
長期優良住宅化 耐震+省エネ+耐久性 | 500万円(600万円) | 50万円(60万円) |
長期優良住宅化 耐震or省エネ+耐久性 | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) |
子育て【拡充】 | 250万円 | 25万円 |
適用期限
この見直しは、対象となる改修工事をして令和6年4月1日から12月31日までの間に入居した場合に適用できます。
今後予定されている子育て世帯等への支援措置
来年の令和7年度税制改正では、子育て世帯等に対するさらなるsh支援の検討が予定されています。具体的には、子育て世帯等に対する生命保険料等控除を拡充し、一般生命保険料控除限度額を6万円に引き上げること等です。
一方、児童手当の支給時間延長に伴い、高校生は一般扶養控除の38万円に代えて、控除額を25万円にする扶養控除の見直しも予定されています。
まとめ
少子高齢化が著しく進んでいる我が国の社会経済情勢の中で、子育て支援は欠かすことのできない施策です。持続可能な社会実現のため、子育て世帯等の可処分所得を少しでも増加させることを目的として本改正がされたものと理解していく必要があります。