4月事務所だより
~改めて見てみよう制度と税務上の取り扱い~
ふるさと納税をした経験のある方はたくさんいると思います。
昨年末も駆け込みで多く行われたという報道があり、今年も行った方がいるでしょう。
一方、返礼品目的で自治体を選択することに気を使い、税務については、漠然と恩恵があるぐらいの知識の方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ふるさと納税の概要と利用状況、手続き、税務上の取り扱いを見ていきます。
ふるさと納税の概要と利用状況
ふるさと納税とは
多くの人はふるさと(地方)で生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っています。その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません。
そこで、今は都会に住んでいても、自分を育ててくれたふるさとに、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があってもよいのではないかという問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれたのがふるさと納税制度です。
この制度は「納税」という言葉がついていますが、実際には都道府県、市区町村に対する寄付です。一般的に自治体に寄付した場合には、確定申告を行うことで、その寄付金額の一部が所得税及び住民税から控除されます。原則として自己負担額から2000円を除いた全額が控除の対象となります。
また、各自治体は寄付に対するお礼として、返礼品を送ることとしていますが、寄付をしてもらうため、この返礼品がエスカレートしていった現実がありました。現在は、
①ふるさと納税の募集を適正に実施すること
②返礼品は返礼割合3割以下にすること
③返礼品は地場産品等で、総務大臣が定める基準に適合するものであること
とされています。
自治体の選択と手続き
ふるさと納税は自分の生まれ故郷に限らず、どの自治体にも行うことが出来るので、それぞれの自治体がホームページ等で公開している、ふるさと納税に対する考え方や、集まった寄付金の使い道等を見たうえで、応援したい、応援したい自治体を選ぶことになります。特に寄付金の使い道については、ふるさと納税を行った本人が使途を選択できるようになっている自治体もあります。
実際にふるさと納税を行う際の手続きについては、選んだ自治体のホームページや、ふるさと納税サイトで確認できます。
利用状況
①令和3年度の受け入れ額及び受け入れ件数
全国合計の受け入れ額は約8300億円、受け入れ件数は約4400万件となっております。
受け入れ額の上位3位は「北海道紋別市」「宮崎県都城市」「北海道根室市」の順となっております。
海産物、畜産物、農産物の返礼品を目的とした寄付が多いように思われます。
②令和4年度課税における住民税控除額及び、控除適用者数
全国合計の住民税控除額は約5600億円、控除適用者数は約740万人となっています。住民税のうち、市町村民税控除額が多い上位3件を見ると「神奈川県横浜市」「愛知県名古屋市」「大阪市」の順です。
いわゆる大都市圏の市区町村の納税者が、多く寄付していることがうかがえます。
このような自治体については、税収が減少するという問題も生じています。
税務上の取り扱い
控除額の計算
前述のとおり、寄付額のうち2000円を超える部分については、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。ただし、一定の上限はあります。
①所得税からの控除
(ふるさと納税の額-2000円)×所得税率
※控除対象となるふるさと納税額は総所得金額の40%が上限になります。
②住民税からの控除
住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、それぞれ次のように計算されます。
イ 基本分
(ふるさと納税の額-2000円)×10%
※ただし、控除対象となるふるさと納税額は総所得金額の30%が上限となります。
ロ 特例分
(ふるさと納税の額-2000円)×(100%-10%(基本分)-所得税率)
※ただし、住民税所得割額の20%を超える場合は、その金額の20%となります。
申告手続き
①原則
寄付をした翌年の3月15日までに、住所地等の所轄の税務署へ確定申告を行う必要があります。
その際には、寄付をした自治体が発行する寄付の証明書・受領証や、専用振込用紙の払い込み控えが必要になります。確定申告を行うと、前述の「控除額の計算」によって所得税と住民税の控除額がそれぞれ決まり、所得税分はその年の所得税から控除(還付)され、住民税は翌年分の住民税から控除されます。
②ワンストップ特例制度
確定申告の不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、申告を行わなくても控除を受けられる「ワンストップ特例制度」があります。
特例の申請には、ふるさと納税の自治体数が5団体以内でふるさと納税を行う場合には各自治体に特例の適用に関する申請書を提出します。
尚、5団体を超える場合にはワンストップ特例制度が利用できず、確定申告を行う必要があります。
過年分のふるさと納税について申告を行っていなかった場合には、一定の期間は還付申告や更正の請求ができます。改めてご確認ください。