印紙税の可否判定 ~この文書には印紙は必要か~

事務所だより

12月事務所だより

 印紙税は、経済取引に伴い作成される文書に負担を求める税です。

 課税される文書に印紙を貼り付け、その印紙を消印することで納付が完了します。

課税文書とは

 印紙税が課税される文書(課税文書)とは、印紙税法に規定する課税事項を証明する目的で作成された、課税物件表に掲げられている20種類の文書とされています。

 一般的なものとしては、不動産の売買契約書(第1号文書)、請負契約書(第2号文書)、売上代金に係る受取書(第17号文書)などが挙げられます。

 ただし、この課税物件表の「非課税物件欄」に記載されている、記載金額が少額であるものなどは、非課税文書として印紙税が課されません。

 また、課税物件表の「課税物件欄」に掲げられていない文書については、そもそも不課税文書として、印紙税の課税対象外となります。

 今回は、これらの課税文書、非課税文書、不課税文書の判断について、間違えやすい点をまとめてみたいと思います。

売上代金に係る受取文書

 売上代金に係る受取書とは、その受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書をいいます。したがって、受取書、領収書、レシート、預り書はもちろんのこと、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相殺」、「了」などと記入したものも含まれます。

 ちなみに、1千万円以下までの税額を見ると、下記表のとおりとなります。

記載金額税額
 5万円未満のもの非課税
 5万円以上  100万円以下のもの200円
100万円を超え 200万円以下のもの400円
200万円を超え 300万円以下のもの600円
300万円を超え 500万円以下のもの1,000円
500万円を超え 1,000万以下のもの2,000円

 そこで、消費税の税抜価格が4万8000円、消費税額が4800円で、合計金額5万2800円に係る受取書(領収書)について確認したいと思います

 受取書の記載金額については、取引金額と消費税額を区分して記載した場合や、税込価格と税抜価格の両方が記載されていることにより消費税額が明らかになる場合には、その消費税額は記載金額に含めないこととされています。

請負契約書

請負契約と委任契約

「請負契約」とは、当事者の一方(請負人)が、ある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約を言います。完成された仕事の結果(成果物)を目的とする点にポイントがあり、できなければ債務不履行責任を負うような契約です。代表的なものには、工事請負契約などがあります。

 また、「委任契約」とは、当事者の一方(委任者)が相手方(受任者)に財産の売買、賃貸借などのさまざまな法律行為を委託し、受任者がこれを承諾することによって成立する契約を言います。先に述べたように請負は仕事の完成が目的であるのに対して、委任は一定の事項に対して事務的な処理をすること自体が目的であり、必ずしも仕事の完成を目的としていません。代表的なものには、不動産業者に土地の売却を依頼する契約や弁護士に訴訟代理を依頼する契約などがあります。

 印紙税では、請負と委任の判断はなかなか難しいのですが、請負契約は課税の対象となり、委任契約は原則として不課税とされています。

月額料金の記載金額

 請負契約については、記載された契約金額が1万円未満のものは非課税文書とされています。

 例えば、保守契約(請負契約に該当するもの)で月額料金9000円で契約期間が2年間の契約書を作成した場合、記載金額はどのように判定することになるでしょうか。

保守契約書
【月額料金】 9,000円(税抜)
【契約期間】 〇年〇月〇日~△年△月△日までの2年間
【契約の更新】当事者間において申出が無い場合は1年間延長とする

 契約書に記載された金額だけを見ると、非課税文書に該当するように思われます。しかし、月額料金と契約期間が記載されている場合には、月額料金×契約期間の月数で算定することになります。

 なお、契約期間の延長部分については、月数として取り扱わないこととされています。

 したがって、この場合の記載金額は9000円×24か月=21万6000円となります(印紙税額200円)

過怠税等

 課税文書に印紙の貼り付けがなかった場合、当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります(印紙税不納付事実申出書を提出した場合は1.1倍)。

 また、せっかく貼り付けした印紙を消印してなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになりますのでご注意ください。

 なお、印紙を誤って貼り付けした場合には、過誤納金として還付の対象になる場合があります。

参考資料 国税庁