法人が特定の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、中小企業の生産力向上など特定の政策目的実現のため、通常償却費のほかに特別償却額の損金算入又は税額控除の適用が認められています。
中小企業を対象とするものとして、「中小企業投資促進税制」、「中小企業経営強化税制」、「中小企業防災・減殺投資促進税制」などがあり、また、広く青色申告法人を対象とするものとして、「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制」や「カーボンニュートラル投資促進税制」などがあります。これらは特別償却額の損金算入と税額控除の選択適用が認められており、高い節税効果を有しています。
これらの制度のうち、今回は比較的、通用しやすい中小企業投資促進税制(以下「投資促進税制」)について、その要件の詳細をみていきます。
特別償却と税額控除
特別償却とは、通常計算される普通償却額に加えて、減価償却資産の取得価額の一定割合を特別償却として損金算入が認められる制度です。
一方、税額控除とは、法人税の課税所得金額に法人税率を乗じて算出された法人税額から控除対象税額を直接差し引くものです。
投資促進税制とは?
中小企業者等が令和7年3月31日までの間に特定の機械等を取得して事業の用に供した場合、その資産について特別償却の適用が認められています。また、「特定中小企業者等」は、特別償却に代えて税額控除を適用することが出来ます。
なお、本税制の適用対象からは次の事業が除外されています。
・生活衛生同業組合の組合員以外が行う料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業
・映画業以外の娯楽業
適用対象資産
投資促進税制の適用対象資産(特定機械装置等)は下表のとおりです。
対象資産 | 金額 |
①機械装置 | 単価160万円以上 |
②測定工具検査工具 | 単価120万円以上 又は 単価30万円以上で期中の取得価額合計120万円以上 |
③ソフトウェア | 単価70万円以上 又は 期中の取得価額合計70万円以上 |
④車両船舶 | 金額制限なし |
⑤建物付属設備 | 対象外 |
いずれも事業の用に供したことがない資産に限定され、中古資産は適用対象となりません。
償却限度額・税額控除限度額と繰越控除額
償却限度額
償却限度額は次の計算式により算出します。
普通償却限度額+特別償却限度額(特定機械装置等の基準取得価額×30%)
式中の「基準取得価額」は機械装置などの取得価額をいいますが、取得資産が内航船舶の場合は、取得価額の75%相当額とされています。
税額控除限度額
税額控除限度額は次の計算式により算出します。
特定機械装置等の基準取得価額×7%
ただし、控除額はその事業年度の調整前法人税額の20%相当額が限度となります。
繰越税額控除額
税額控除において、その事業年度で控除しきれない税額があった場合、そのよく事業年度に限り繰越控除することが出来ます。
ただし、繰越控除をする事業年度の調整前法人税額の20%相当額が限度となります。
中小企業尾経営強化税制との比較
制度の概要
中小企業者等が、製造後使用されたことがない資産を取得した場合に、投資促進税制と同様、特別償却と税額控除を適用できる制度として中小企業経営強化税制(以下「経営強化税制」)があります。
経営強化税制は、設備等の取得前にその設備の類型に応じて、中小企業等経営強化法に規定する経営力工場計画の認定を所管大臣から受ける必要があります。
経営強化税制は即時償却が認められており、投資促進税制の償却限度額より有利な適用が可能です。また、税額控除限度額についても、適用対象法人が資本金3千万円以下の場合は、取得した設備等の取得価額の10%が限度となります。
適用にあたっての注意点
投資促進税制は確定申告書に必要事項を記載し、提出するだけで適用することが出来ますが、経営強化税制は前述のとおり、設備等の取得面に経営力向上計画の認定を受ける必要があるため、適用には一定の労力と時間が必要になります。
両制度の使い分け
適用対象となる設備等について、例えば、取得価額160万円以上の機械装置や単価70万円以上のソフトウェアを導入した場合は、投資促進税制と経営強化税制の選択適用となります。各種自動化設備や生産管理システムを導入するなど、複数の設備投資を同時に行った場合、それぞれの投資ごとに両制度を使い分けることも可能です。
ただし、その場合でも税額控除限度額は、その事業年度の調整前法人税額の20%相当額となります。
まとめ
投資促進税制・経営強化税制とも適用期限は令和7年3月末とされています。対象となる設備等を購入した場合に適用漏れや期限徒過がないように留意するとともに、今後の税制改正で、本税制の適用期限が延長されるかにも着目し、自社の設備投資計画を立てる必要があります。