従業員への食事の支給とその経理処理

事務所だより

 中小企業等では、福利厚生の一環として従業員の昼食代を会社が負担しているケースも少なくありません。

 また飲食業では、従業員に賄いを提供している例も多く、さらに最近では、ランチミーティングなど、昼食時に会議を行い、その代金を会社が負担することもあると思います。

 今回は、そのような従業員に食事を提供した場合の経理処理についてみていきます。

会社が従業員に食事を無償で提供している場合

 昼食代は、従業員の生活費の中で負担することが原則です。したがって、その代金を会社が全額負担して食事を無償提供した場合は、会社が現物給与を従業員に払ったとみなして課の対象になりますが、次に述べる例外があります。

会社が食事代の一部を従業員から徴収の上、提供している場合

会社がその食事代の半分以上を従業員から徴収している場合は、原則として課税の対象になりません。

 ただし、会社の負担額が月額3500円を超えるときは、その会社負担額の全額が給与所得として課税の対象になります。

 言い換えれば食事代の半額以上を従業員から徴収し、かつ会社の負担額が月額3500

円以下であればその食事代について課税の対象にはならないということです。

 これを具体的に示したのが【下表】です。

食事代
(一か月)
従業員負担額会社負担額課税の有無課税対象額
7000円3000円4000円有※14000円
7000円3500円3500円0円
8000円4000円4000円有※24000円
8000円4500円3500円0円
※1 従業員の負担割合が半分以下なので課税 ※2会社負担額が3500円超なので課税

 この場合の「食事代」の課税関係は、それぞれ次のとおりとなります。

 自社で調理した食事

主食、副食、調味料等に要する直接費の額に相当する金額

 飲食店から購入した食事

 その購入価額に相当する金額

 会社の負担額が3500円を超えるかどうかは、その食事の価額からその従業員の負担した金額を差し引き、さらに当該金額から消費税の額を差し引いた残額により判定します。

①飲食店から弁当を購入して提供した場合(8パーセント)

②契約食堂等で食事を提供した場合(10パーセント)

上記①であれば、会社の一か月あたりの負担額が3780円、前記②の例であれば、会社の負担額が3850円以下で、かつ同額以上を従業員から徴収していれば、課税の対象にはなりません。

計算式①

【外部から弁当を購入して提供した場合※消費税率8%】

3500円×108/100=3780円

計算式②

【契約食堂で食事を提供した場合※消費税率10%】

3500円×110/100=3850円

残業又は宿日直をした従業員に食事を提供した場合

 残業または宿日直をした従業員に提供する食事については、その勤務が通常勤務の時間外の勤務として行われたものであれば、課税の対象にしなくて差し支えありません。

 ただし、食事の現物支給に代えて食事代相当額の金銭を支給した場合には、その金銭は一種の食事手当に相当するものとして、その全額について給与所得として課税されることになるので注意が必要です。

深夜勤務者に夜食に代えて支給する金銭

 看護師や守衛など、正規の勤務時間が午後10じから翌日午前5時までといったような、いわゆる深夜勤務者に対して、夜食に代えて金銭を支給する場合には、①夜食を現物で支給することが困難な事情があるために、それに代えて支給するものであること、②通常の給与に加算して支給するものであること、③勤務1回ごとの定額で支給するものであること、④一回の支給額が300円以下であることを全て満たすものは課税の対象にはなりません。

食事の支給を福利厚生費として処理するための要件

 会社が従業員の食事代を負担した場合、その代金は福利厚生費として処理することが出来ます。ただし、この処理が認められるためには、会社がいったん、食事に係る費用を負担してから従業員負担分を徴収する必要があります。一方、従業員が飲食店等に支払った食事代について、給与支給日にその半額を会社が従業員に現物支給したような場合は、その支給額は給与所得として課税されるので注意が必要です。

社会会議などで食事を支給した場合

 最近では、ランチミーティングとして昼食時に業務の打合せを行うことも増えており、その昼食代金を会社が負担するようなケースもあると思います。

 この場合の食事代は、会議に関連して通常提供される範囲の飲食であれば「会議費」として損金に計上することが可能です。ただし、そのミーティングが「業務上の会議」であることの証明として、議題が記載された日程表や出席者名簿、議事録などを保存しておくとよいでしょう。

 また、従業員の慰労やモチベーションの向上のため、誕生日会などを兼ねて昼食会を開催し、その食事代金を会社が負担するケースもあるでしょう。

 このような時でも前述のとおり、その昼食会が全従業員を対象にし開催されるものであれば、その昼食代金は「福利厚生費」として処理することが可能です。

しかし、特定の者だけを対象に昼食会を行うような場合には「社内交際費」として交際費に計上することになります。