従業員等が会社から受ける経済的利益 ~給与課税の対象とならないように注意~

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 5月事務所だより

会社の役員や経理担当者の中には、従業員等に対して金銭による給与以外の費用負担や金品の贈与などを行った場合、それらは単純に会社の経費(損金)として、給与課税の対象外とお考えの方もいるのではないでしょうか。

 今回は、このようなケースにおける税務上の取り扱いを見ていきたいと思います。

経済的利益として課税されるものとは

 注意しなければならないのは、給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらす費用負担などは、「経済的利益」として給与課税の対象となることです。

 この経済的利益に該当するものの例として、次のものがあります。

経済的利益の例

① 物品(商品)その他の資産の無償・低額譲受
② 土地・家屋その他の現金以外の資産の無償・低額借受
③ 金銭の無利息・低利息借り受け
④ ②、③以外の用役(サービス)の無償・低額享受
⑤ 未払金等の債務の免除・肩代わり

経済的利益として課税される額

前述の「経済的利益の例」における、主な給与課税の対象となる金額は次のとおりです。

 物品(商品)その他の資産の無償・低額譲受

 無償の場合はその資産の時価、低額の場合はその額と実際に支払った金額との差額。

土地・家屋その他の現金以外の資産の無償・低額借受

 無償の場合は通常支払うべき対価の額、低額の場合はその額と実際に支払った金額との差額

金銭の無利息・低利息借り受け

 無利息の場合は通常に利率により計算した利息の額、低利息の場合はその額と実際に支払った利息との差額。

②、③以外の用役(サービス)の無償・低額享受

 無償の場合は通常支払うべき対価の額、低額の場合はその額と実際に支払った金額との差額。

未払金等の債務の免除・肩代わり

 債務免除の場合はその免除された金額の相当額、肩代わりした場合はその負担した金額。

給与課税の対象とならない経済的利益の例

 次のような費用負担は、給与課税の対象とならないとされています。

通勤手当・旅費等

①電車・バス通勤者の通勤手当

 通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額。ただし、新幹線や特急列車を使用した場合の運賃等の額は、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路及び方法」に該当する場合には含まれますがグリーン料金は含まれません。また、一か月あたり15万円を超える場合には15万円が限度となります。

②マイカー・自転車通勤者の通勤手当

 一か月あたりの限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて、次頁表のように定められています。

③転勤に伴う転居費用等

 家族分も含めて転居のために必要な運賃、宿泊費、引っ越し費用などとして、適正な旅費規定に基づく金額であれば非課税とされています。

 また、単身赴任などの帰省旅費については、従業員個人が負担すべきものとして、課税の対象となりますが、職務の遂行上必要な移動に付随して帰宅したような場合には、原則として非課税とされています。

マイカーなどで通勤している人の非課税となる一か月あたりの限度額の表

通勤距離(片道)限度額(一か月あたり)
2キロ未満全額課税
2キロ以上10キロ未満4200円
10キロ以上15キロ未満7100円
15キロ以上25キロ未満12900円
25キロ以上35キロ未満18700円
35キロ以上45キロ未満24400円
45キロ以上55キロ未満28000円
55キロ以上31600円

社宅費用

 従業員の社宅や寮の場合、1か月あたり一定額の家賃(賃貸料相当額以上)を受け取っていれば課税されません。

 この場合の賃貸料相当額は、次の金額の合計額を言います。

ア その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%

イ 12円×(その建物の総床面積÷3.3㎡)

ウ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

 賃貸料相当額と実際に受け取っている家賃との差額が給与として課税されますが、従業員に限り、賃貸料相当額の50%以上の家賃を受け取っている場合、差額は課税しないこととされています。

 会社などが所有している社宅や寮などを貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも、前述のア~ウを合計した金額が賃貸料相当額となります。したがって、他から借り受けた社宅や寮などを貸す場合にも貸主等から固定資産税の課税標準額を確認することが必要です。

 なお、役員社宅の場合には、一定の床面積を超える場合や、いわゆる豪華社宅に該当することになる場合は、非課税要件が厳しくなるので注意が必要です。

食事支給・補助

 次の二つの要件どちらも満たしている場合には非課税とされています。

①役員や従業員が食事の価額の半分以上を負担していること

②次の金額が一か月あたり3500円(税抜き)以下であること

(食事の価額)-(役員や従業員が負担している金額)

 この場合の「食事の価額」とは、弁当などを購入して支給している場合には、業者に支払う購入金額、社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額となります。

 ただし、食事を支給するのではなく、現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食あたり300円以下の金額を支給する場合を除き、補助する全額が課税の対象となります。

 なお、残業又は、宿日直に対して支給する食事は、無料で支給していても非課税とされています。

社員旅行

 その旅行の内容(旅行の企画立案・目的等)を総合的に勘案して、社会通念上一般に行われる旅行と認められるものについては、非課税とされています。具体的には、その経済的利益の額が少額で、次のいずれの要件を満たすものとされています。

①旅行の期間が4泊5日以内

②参加人数が50%以上

人間ドックの費用負担

 健康管理の必要から、一般的に実施されている人間ドック程度のもので、一定年齢以上の希望者はすべて検診を受けることが出来かつ、受けたものの全てを対象として費用を負担する場合には非課税とされています。

参考資料 国税庁給与等に係る経済的利益