所得税・相続税「生計を一にする親族」の判定基準

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所得税や相続税の申告において、「生計を一にする親族」の判定は控除や特例の適用に直結します。同居・別居の有無だけでなく、生活費の送金など実態に基づく判断が求められますので、所得税・相続税それぞれの判定基準と留意点を整理します。

所得税・復興特別所得税(以下「所得税等」)の確定申告では、申告する納税者の個々の事情を税額の計算に反映させ、それぞれの担税力に沿った納税額を算出するために、各種の所得控除が設けられています。その適用に当たり、「生計を一(いつ)にする親族」を適用対象とする控除があります。

また、相続税の申告では、被相続人が自宅や事業用建物の敷地として使用していた土地を相続した場合、評価額を最大80%減額することができる「小規模宅地等の特例」がありますが、本特例でも「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族」が居住していた宅地等が、その対象に含まれています。

所得税等または相続税のいずれにおいても「生計を一にする親族」の要件を正しく理解することは税額計算を大きく左右する重要な要素です。本号では、「生計を一にする親族」の具体的な判定基準を、所得税等と相続税ごとにみていきます。


1. 所得税等における判定基準

所得税法上設けられている各種の所得控除について、「生計を一にする親族」が適用要件となるものは【下表1】のとおりです。なお、税法上の「親族」とは、「六親等内の血族」、「配偶者」、「三親等内の姻族」をいうものとされています。

そして所得税法等では、「生計を一にする親族」とは次のように規定されています。

  • 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする親族」と取り扱う。
  • 勤務、修学、療養等の都合上、他の親族と日常の起居を共にしていない親族であっても、
    • ① その親族が勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にすることが常例となっている場合
    • ② これらの親族間において、常に生活費や学資金、療養費等の送金が行われている場合は「生計を一にする親族」と取り扱う。

以上のとおり、「生計を一にする親族」とは、必ずしも同居を要件とするものではなく、別居していても、生活費を送金するなどして「同じ財布」で生活していれば生計を一にする親族と認められることになります。別居している親族の生活費や療養費を送金して、その親族を年末調整において扶養控除の対象にするような場合は、銀行振込や現金書留の送金控を保管し、必要に応じて、源泉徴収義務者にその控えを提示し、確認を受けることができるよう準備しておく必要があります。


2. 相続税・小規模宅地等の特例の適用における判定基準

個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定要件に該当するものは、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額することができます。被相続人と生計を一にしていた相続人が適用することができる特例の適用要件は【下表2】のとおりです。

小規模宅地等の特例適用に当たり、「生計を一にする親族」との要件の判定基準は所得税法上の基準と同一ですが、二世帯住宅に居住する親子の相続について、生計を一にする親族として小規模宅地等の特例が適用できるかどうかが争われた裁決事例があります。

この事例では、1階に子が居住、2階に被相続人が居住していました。しかし、

  • ① 建物の構造上、それぞれ独立した居宅となっていること(区分登記あり)
  • ② 水道光熱費や生活費も独立していたこと

などから、相続人である子については小規模宅地等の特例にいう「被相続人の居住の用に供されている宅地に同居する親族」とも「生計を一にする親族」とも認められないと認定されました。同じ建物に居住している親族でも「同じ財布」で生活している事実がなければ「生計を一にする親族」とは認められないことが示された事例です。


まとめ

生計を一にする親族に該当するかどうかの判定は、

  • ○ 子のある方と再婚した場合にその子を扶養控除の対象にできるか?(その子が16歳以上で所得が一定額以下、再婚後の両親と生計を一にしていれば控除対象)
  • ○ 離婚後、養育費を負担している子を扶養控除の対象にできるか?(養育費が扶養義務の履行として一定の年齢までに限って支払うものであれば、生計を一にしているとして控除対象にできる)

といったデリケートな問題にも関係します。認定基準を正しく理解するとともに、「同じ財布」で生活していることを証明できる資料の準備が必須です。


【表1】生計を一にする親族であることが適用要件とされる所得控除(令和7年分)

控除名称適用対象となる親族等の要件
1雑損控除損害を受けた資産の所有者が、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、年間総所得金額等が58万円以下であること
2医療費控除支払った医療費が納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費であること
3社会保険料控除支払った社会保険料が納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族が負担すべき社会保険料であること
4障害者控除納税者と生計を一にする配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者であること
5ひとり親控除納税者が、年間合計所得金額が58万円以下の生計を一にする子(他の人の配偶者や扶養親族とされている者を除く)を有すること
6配偶者控除納税者と生計を一にし、年間合計所得金額が58万円以下の配偶者であること(内縁関係・事業専従者を除く)
7配偶者特別控除納税者と生計を一にし、年間合計所得金額が58万円超133万円以下の配偶者(内縁関係・事業専従者を除く)であること
8扶養控除納税者と生計を一にする16歳以上で、年間合計所得金額が58万円以下の親族(事業専従者を除く)であること
9特定親族特別控除納税者と生計を一にする19歳以上23歳未満で、年間合計所得金額が58万円超123万円以下の親族(配偶者、事業専従者を除く)であること

※他に、①夫婦間で相互に配偶者特別控除を適用していないこと、配偶者が親など別の親族の源泉徴収において扶養親族として控除を受けていないなどの要件があります。


【表2】被相続人と生計を一にしていた相続人が適用することができる小規模宅地等の評価の特例

対象となる宅地等要件限度面積と評価額の減額割合
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等(特定事業用宅地等に該当する宅地等)① 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること。
② その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。
限度面積 400㎡
減額割合 80%
被相続人と生計を一にしていた相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等(特定居住用宅地等に該当する宅地等)① 被相続人の配偶者については取得者の要件なし。
② 被相続人と生計を一にしていた親族については、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。
限度面積 330㎡
減額割合 80%