減価償却とは、事業の用に供している減価償却資産の取得価額を、定められた使用可能期間(耐用年数)にわたって費用配分する会計手続きです。
法人税法では、法人が減価償却費として損金経理した金額のうち、減価償却資産の取得価額、償却方法、耐用年数などを基礎として計算した償却限度額に達するまでの金額を損金算入することとしています。償却資産ごとの耐用年数や償却率、保償率などは減価償却資産の耐用年数等に関する財務省例に定められていますが、対象資産の範囲は広く、規定も詳細かつ複雑なため、耐用年数などの適用を誤って思わぬトラブルを引き起こすとこがあります。
今回は、減価償却費の算出にあたり、特に注意が必要な実務上のポイントをみていきます。
資産の取得価額の算出と償却開始日は適正か?
取得した減価償却資産の取得価額には、購入した場合又は自社で建設・製作等した場合ごとに、費用の額が含まれます。
不動産取得税、自動車税、登録免許税など、登記・登録のために要する租税公課などは、減価償却資産の取得に関連して支払ったものでも取得原価に算入しないことが出来ます。ただし、一度、これらを取得価額に算入した場合は、その後の事業年度でその費用を抜き出して損金処理することはできません。
減価償却資産の償却開始日は、その資産の「事業供用の日」です。事業未供用であるにもかかわらず、資産の搬入日・設置日などを償却開始日とすると、償却費の計算に誤りが生じる場合があるので注意が必要です。
資産の種類による償却方法の選定に誤りはないか?
法人が取得した資産のうち、建物・建物付属設備・構築物・ソフトウェア等は、原則として定額法により減価償却費を計算しなければなりません。
それ以外の資産は、原則として定率法により減価償却費を計算しますが、機械設備・車両運搬具・工具器具備品は事前に税務署に「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出し、承認を受けることで、定額法を採用することもできます。この申請書は、変更したい事業年度の開始前日までに提出する必要があります。
事業年度の中途で事業の用に供した場合、償却限度額は適正に計算されているか?
事業年度の中途で事業の用に供した減価償却資産の償却限度額は【表2】に記載の計算式で算出します。
この計算式において月数は暦に従って計算します。計算中、1か月に満たない端数が生じたときはこれを切り捨てず、一か月とします。
表1 事業年度の中途で事業の用に供した場合の償却限度額
【その減価償却資産について採用されている償却方法によって計算した償却限度額】
×
事業の用に供した日から期末までの月数/その事業年度の月数
中古資産を取得した場合の耐用年数の算定に誤りはないか
中古資産を取得して事業の用に供した場合、その耐用年数は法定耐用年数ではなく、事業の用に供したとき以後の使用可能期間として見積もられた年数によります。使用可能期間の見積もりが困難なときは、【表3】に記載の「簡便法」により算定した年数によることもできます。簡便法により算出した年数に1年未満の端数があればその端数は切り捨て、その年数が2年に満たないときは2年とします。
表2 中古資産の耐用年数(簡便法)
〇法定耐用年数の全部を経過した資産法定耐用年数×0.2
〇法定耐用年数の一部を経過した資産(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
(注)1年美奈㎜の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年とする。
少額減価償却資産の取得価額の孫棋院参入の特例適用などは検討したか?
取得価額が少額の減価償却資産は、通常の減価償却のほかに、一括で損金算入するなど、【表4】に記載の方法を選択することが出来ます。
また、青色申告法人である中小企業者等のうち常時使用する従業員の数が500人以下の法人が、令和8年3月31日までの間に少額減価償却資産(※)をしゅとくして事業の用に供した場合は、取得価額の全額を損金算入することができます。
ただし、その事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計が300万円を超える場合は、本特例適用額は300万円が限度となります。
表3 取得価額が少額ウノ減価償却資産などの償却方法
10万円以上20万円未満 | 資産計上:通常の減価償却 資産計上:一括償却資産 |
10万円未満 | 資産計上:通常の減価償却 資産計上:一括償却資産 損金処理:事業供用年度で |
まとめ
資産の種類の選択や償却方法の選定などをいったん誤ると、その是正はその事業年度に止まらず、各事業年度の決算に影響を与えます。判断に迷った場合は税理士の意見を聴くなど、慎重な対応が必要です。
【参考資料】国税庁タックスアンサー「減価償却」